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方法論部会 数理経済学会

社会科学の方法論にまで立ち戻り、とりわけ数理的観点から経済学理論のあり方について考える部会。哲学、統計、歴史的な議論までも包摂し、広く社会の科学の方法論一般についての議論をベースに、今日の経済学理論の、ひいては数理的な社会科学全体の、あるべき方向性および新機軸について考える。

「重要」ではあるが「容易には解けない」社会科学の種々テーマ群に向けた、根源からのアプローチ

【部会概要】

本研究部会は、「数理」という共通の道具を持ちながらも、 常日頃は異なる個々分野の問題に専心しがちな研究者が、 社会科学の方法及びあるべき姿といった大きな観点から共有し得る、 最重要な種々テーマに関し、 専門領域をまたいだ議論の場を提供しようとするものである。

本学会には「数理」という共通の強固なコアを持ち、 また「社会」に関心のある専門家の集まるところであるが、 この「社会」というものを捉えるにあたっての最も重大な問題の多くは、 その「専門性」ということと必ずしも相容れない事柄と大きく関わっている。

例えば、哲学的な問題、 方法論は社会科学において自己自身を見つめるという意味を持って、 学問の形成時期において極めて発展した議論をもたらしたものであるが、 それは今日、合理性、倫理、人間といったテーマを取り扱うにあたって、 ゲーム理論、社会選択論、情報の経済学、あるいは行動といった観点からも再度、 必要とされており、 同時に、動学と静学の関係、 貨幣と信用といった歴史的なテーマにも、深い関わりを持つところである。

また、当学会は「純粋理論」を中心とする専門家が多くを占めるところであるが、 そもそも理論というものがその一般性もしくは普遍性に頼ろうとするとき、 必ずそれを補うところとしての特殊的、個別的な事例研究、 データといったものによって補完されるのでなければ、 やはり「人間」や「社会」の総体を、大きく捉え損ねるものであり、 これは統計、歴史といったものと、 理論との関わりが社会科学においてどうあらねばならないかという重要な問題を、 常に我々に喚起するのである。

加えて、とりわけ「数学」というものに対して、 それが「社会」を取り扱う道具としてそもそも適切であるのか、 という重大な問題、 古くから経済学の内外を通じて行われているいわゆる「経済学批判」は、 必ずしも「数理」そのものへの批判ではないが、 それ故に、それは数理経済学会において、 まさしく自らを見つめ直す「数理」に基づく社会科学として、 厳密に議論するに相応しい重要課題の一つと言えるであろう。

以上のように、 常日頃の問題意識とは幾分異なる(場合によっては政治、 文化、歴史といった幅広い知見も含めた)重要課題について、 各専門における理論上の関心に止まらず、 「数理的な、社会についての学問」、 という全体的視野に基づいた議論の場と、 将来的な問題提起を与えること、多くの研究の促進を図ること、 そのような機会となることが当該部会の目的であり願いである。

【設立趣旨・理念】

数理経済学が、「数理を基礎とした社会の把握」という、 その厳密かつ幅広い本来の視野を持ちつづけ、 自律的かつ総合的な学問研究として発展し続けるためには、 常に自らの理論体系を問い直し見つめ直す姿勢と機会とを持つことが必要であり、 そのためには「社会科学の方法」という観点を軸として、 自らを根源から再定義するということが、今日必要であると考える。 数理と哲学、データおよび事例研究、歴史、社会学、 そういった幅広い関心と知見が理論経済学という研究分野に融合することを願って、 数理経済学会に、当該部会を立ち上げるものである。

幹事(一般会員3~5名程度): 浦井 憲 葛城政明 竹内惠行 白石晃三 村上裕美